従来、がんの治療はがんの発見された臓器別に行われてきました。しかし、現在は、がんの原因が遺伝子にあることが明らかとなり、がんに結びつく遺伝子変異別に治療法が選択されるよう変化していきました。この変化に伴い、「がんゲノム医療」が2019年に始動しました。

がんゲノム医療とは、主にがんの組織を用いて、多数の遺伝子を同時に調べ、遺伝子変異を明らかにすることにより、一人一人の体質や病状に合わせて治療を行う医療のことをいいます。患者さん一人ひとりがんの原因遺伝子変異は異なるため、その原因遺伝子を特定するために、「がん遺伝子パネル検査」が活用されます。この検査は100種類以上のがん遺伝子を一度に調べることができ、得られた検査結果は、患者さんの治療歴や身体の状態などを踏まえて「エキスパートパネル」という会議で総合的に検討し、治療方針が決定されます。エキスパートパネルには、主治医、遺伝子医学や病理学の専門医など様々な専門家が参加し、最新かつ確かな情報を用いて検討が行われています。こうしたがんゲノム医療が行われることにより、患者さん一人ひとりにあったがんの治療が行える時代になりました。

2019年6月1日にがんゲノム医療に関するがん遺伝子パネル検査が保険適用となり、さらに多くのがん患者さんに適切な治療が施されることが期待されます。日本人の2人に1人ががんに罹患するこの時代、がんゲノム医療の発展がより多くのがんで苦しむ人にとって救いになるよう、われわれ医療従事者は日々努力を続けます。