診療科・部門のご案内

間質性肺炎センター

スタッフ紹介

センター長 本間 栄 センター長 本間 栄
氏名 職名
本間 栄 教授
坂本 晋 准教授
杉野 圭史 講師
澤田 哲郎 助教
一色 琢磨 助教

間質性肺炎センターの概要

背景と目的

 病変の主座が肺胞領域、細気管支領域の間質に認められる間質性肺疾患のうち、急性、亜急性、あるいは慢性に肺胞間質の線維化を特徴とする疾患群が間質性肺炎です。
 原因不明の特発性のものから薬剤、膠原病など原因が明らかな二次性のものまで多種多様であり、近年、社会的注目度が極めて高い疾患です。慢性線維化型間質性肺炎の中でも最も頻度が高い特発性肺線維症 (idiopathic pulmonary fibrosis; IPF)の発症率に関して、北海道のコホート研究調査によると、年間発症率は10万人あたり2.23人で、諸外国との比較においては、欧米では年間発症率が10万人あたり4.6~8.8人とされています。IPFは喫煙者の男性に多く認められ、発症時の平均年齢は65歳、平均生存期間は3~5年の難治性疾患で、国の指定難病の一つです。
 合併する肺癌や急性増悪、肺高血圧は重要な合併症であり、基本的な治療法の確立と共に、この様な合併症に対する治療法の確立が喫緊の課題であります。また、間質性肺炎診療においては、常に治療抵抗性であるIPFを意識しながら鑑別していくことが大切ですが、疾患多様性を有する間質性肺炎の診断は困難な場合が多く、高度の専門性が求められます。
 最終診断の精度を高めるには、間質性肺炎の診断に精通した臨床医、放射線画像診断医、病理医による集学的検討 (multidisciplinary discussion; MDD)が重要であり、間質性肺炎が疑われた際は、できるだけ速やかに専門医に相談・紹介し、専門的な検査・診断・治療が必要です。
 しかしながら、わが国ではまだこのような系統的な専門施設や定期的にMDDを行える施設が殆どないのが現状であり、今後、MDD診断の普及と質の向上を目指して、他施設との連携を図りながら、各専門医を育成していくことが重要な課題の一つです。
 東邦大学大森医療センター呼吸器内科では、この10年間で間質性肺炎の新規入院患者数、セカンドオピニオン外来患者数、臨床治験症例数、外科的肺生検症例、リハビリテーション導入症例、間質性肺炎合併肺癌手術症例ともに著増しております。このような背景から各診療科・領域を統合した我が国の大学初の間質性肺炎センターを開設いたしました。当センターを拠点とした活動を全国展開することは、当分野の更なる発展とともに、患者一人一人に合ったきめ細かな医療(個別化医療)につながるものと考えられます。

活動内容を列記致します。

(a) 診断:適切な診断法、重症度ならびに予後因子
  • 間質性肺炎患者の効率的な診断法の構築。
  • 重症度判定の構築。
  • 予後予測因子の探索。
  • 病理診断学的アプローチの有用性。
  • MDD診断システムの構築。
(b) 治療:治療薬の選択と導入の時期について
  • 経過観察方法の確立。
  • 抗線維化療法の適応と介入時期の推測。
  • 高率に合併する肺癌症例、肺高血圧症例に対する治療戦略。
(c) 患者会設立:患者さんとご家族の支援、患者会設立に向けて
  • 間質性肺炎について医師、理学療法士、看護師による講演、リハビリテーション実習、質問コーナーを行い、患者の声を募ります。
  • 年に1回のペースで患者勉強会を開催し、患者会設立に向けた議論を行います。
(d) 地域医療の活性化
  • 近隣関連病院ならびに地域がん診療拠点病院(坪井病院:郡山市)との連携診療の構築。関東周縁地域におけるびまん性肺疾患の啓発活動指導などを行なっていきます。
(e) その他
  • 新規治療薬を用いた臨床試験・治験への取り組み
  • 他の診療部門(呼吸器外科、膠原病内科、循環器内科、小児循環器科、リハビリテーション科、麻酔科、臨床検査科、病理科、放射線診断科)との連携による最適な診断・治療方法・予後予測を検討します。
  • 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業のびまん性肺疾患に関する調査研究班ならびに日本医療研究開発機構研究費難治性疾患実用化研究事業のびまん性肺疾患に対するエビデンスを構築する新規戦略的研究班の研究代表者を歴任し、コアメンバーとして、今後も引き続き活動を継続します。

組織と体制

 専従医師5名に加え、専任の臨床検査技師1名、看護師または診療クラーク1名。それ以外に、呼吸器科、中央臨床検査部生理機能検査室(呼吸機能)の臨床検査技師、外来看護師が随時協力する。定期的に上記診療部門との多職種によるカンファランスを実施しよりよい医療を目指します。

専従医師:5名

  • 外来:週4回、間質性肺炎の初診ならびに再診患者の診療をします。
  • 入院:半年に1回、間質性肺炎進行度の評価、治療の再検討を行います。
  • 専従医師以外にも、初診および再診患者については呼吸器センター内科医師が外来診療にあたります。
  • 入院患者には呼吸器内科医師と専従医師が協力して対応します。

外来担当

 
午前   本間 坂本
澤田
一色 杉野
午後          

臨床検査科との連携

  • 患者から同意の得られた主に血液検体から、診断および治療効果判定に用いられる新規バイオマーカーの探索を行います。
  • 基礎研究を行い、臨床の治療法へのフィードバックを図ります。

リハビリテーション科との連携

  • 患者選択基準や運動療法の頻度や強度など、多面的な側面から実施方法について詳細な検証を行い、重症度に合わせた最適な呼吸リハビリテーションプログラムを作成しています。
  • リハビリテーション科医師および理学療法士との協力や定期的なミーティングを開催し効果の検討やプログラムの再検討を行います。

呼吸器外科との連携

  • 非侵襲的VATS下肺生検の確立をめざしています。
  • 間質性肺炎合併肺癌の安全な外科療法の確立を検討しています。

麻酔科との連携

  • 間質性肺炎手術時の安全な麻酔法の確立を目指しています。

膠原病科との連携

  • 膠原病合併間質性肺炎の病態解明・治療法開発を目指しています。

循環器内科・小児循環器科との連携

  • 間質性肺炎合併肺高血圧症の病態解明・治療法開発を目指しています。

病理科との連携

  • 効率的な診断法の確立を目指しています。
  • 診断一致率の検討。
  • MDD診断法の確立を目指しています(肺病理専門の非常勤講師と協力)。

放射線診断科との連携

  • 画像診断標準化のための診断基準の検討を目指しています。
  • 診断一致率の検討を目指しています。
  • MDD診断法の確立を目指しています(肺画像専門診断医の非常勤講師と協力)。